6月16日から24日まで、バングラデシュへ行ってきました。世光保育園が加盟している日本キリスト教保育所同盟がバングラデシュのプレスクール(就学前児童の就学準備のための幼稚園のようなもの)活動を支援しており、その視察と交流をするためです。

 首都ダッカから小さなフェリーに乗り一晩川を下り、ボリシャルという町に着きます。そこには聾学校があり、耳の不自由な生徒たちが自立のためのトレーニングをしています。

 そこから西方面、クルナ管区というところへ移動し、さらにインドとの国境近くへ行くと、私たちが支援しているプレスクールが点在するタラという村にたどり着きます。

 プレスクールは1ヶ所に20〜40名程度の子どもたちがいて、読み書きや生活習慣などを教えています。バングラデシュの小学生の就学率は決して低くはありませんが、最後まで学び切れずに卒業できない子は少なくありません。外務省のデータによれば、就学率は97%、卒業するのは78%だそうです。親たちは子どもの教育の必要性について十分認識していて、少しでも良い教育を長く受けさせたいと願っています。しかし、小学校に入っても勉強についていけなければ学ぶ気力を失うので、せめてプレスクールで事前学習を受けさせたいと思っているようです。

 でも、それだけではありません。女性たちが自立するために女性たちも働きたいのですが、子どもがいたのでは働きに出られません。そこで、子どもをプレスクールに預けて学ばせている間、お母さんは畑に出たりするのです。その場合のプレスクールは、まさに保育園的な役割です。

 滞在期間中、プレスクールや小学校の先生方との意見交換の時を持ちました。いつもそうなのですが、現地からは「教材が足りない」「給食を食べさせてあげたい」「カバンや制服があれば、子どもたちが学校に来たいというモチベーションに繋がる」「私たちの給料も安いから、もう少し上げて欲しい」などの要望がたくさん出てきます。今回もそのような要望がたくさん出ました。その時です。同行してくれていた現地法人の理事長がひと言「自分たちには何ができるか。どんな工夫が可能か。要望ばかりではなく、そういうことも考えなさい。君たちにできる工夫はまだまだいっぱいあるはずだ。」と話されたので、驚きました。彼は、支援に依存する体質になりがちな思考に対し、自立を促したのです。

 以来、自立ということについて思いを巡らせています。読んで字のごとく、自分で立つという意味なのですが、何でもかんでも自分でしなければならないという意味ではないでしょう。自己責任とも違うし、助けを受けないということでもない。では自立とは何でしょう。

 それは、自分で立とうとすることだと思うのです。誰かに責任を押し付けたり、任せっきりにしたり、頼り切ったりするのではなく、助けを借りながらも自分で立とうとすること、それが自立でしょう。だとしたら、自覚と責任を持って自ら立ち続けようとする覚悟が求められます。そんな覚悟ないと泣き言を言いたくもなりましょうが、私たちは誰しもが社会の中である程度その覚悟を求められているのです。少なくともそういう人を応援したいな、と私は思うのです。

園長:新井 純


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