新型コロナウィルス感染症の第2波とも言われる騒動に振り回された夏でした。加えて、熱中症対策という言葉を聞かない日はないくらい猛暑日が続き、夏を楽しむどころか、何とか無事にやり過ごせるようにと祈るほどでした。新型コロナ対策はまだまだ続きそうで、皆様にもご協力いただかねばなりませんが、子どもたちも保護者の皆様も、保育にあたる私たち職員も、健康が守られて、平安のうちに過ごせるよう祈るものです。

 連日の猛暑でしたが、当園の職員の中に、エアコンを使わずに寝ている者がいます。正確には、家にエアコンがあるのはリビングのみで、寝室含めて他の部屋にはエアコンを設置していないというのです。思わず、「どうやって寝てるの!」と聞かないではいられないのですが、アイスノンを抱えて寝てますとのこと。しかも、わずかでも夜間の温度が下がるような日は、窓も閉めてしまうのだそうです。私だけでなく、何人もの同僚から「死ぬよ?」と言われても、案外大丈夫なものです、と笑顔で答えていました。

 確かに、暑いから健康を崩すわけではありません。暑さから脱水症状を起こし、体温調節ができなくなり、熱中症になると大変なのであって、自然な汗がかけているのなら大丈夫なのです。実際、私自身、南の島にボランティアに行っていた時には、高温多湿のジャングルの中、エアコンどころか扇風機もない部屋でちゃんと寝られていました。静かに横になっているだけで、身体中を汗がスーッと流れ落ちていくのがわかるような環境でしたから、流石にはじめの数日間は寝苦しく感じていましたが、そのうち慣れてしまうのですから、人間の適応力はすごいものです。

 ただ、北海道から来た若者は、体調を崩してしまいました。汗を上手にかけなかったようです。本人のせいではなく、生まれ育った環境が、そのような暑さに対応する体を作らなかったのでしょう。それでも、10日くらいすると元気に働けるようになったのですから、これもまた適応力の凄さなのかもしれません。

 ちょっと前までは、エアコンなどで子どもを甘やかさない方が良いなどという意見を耳にしていました。その方が汗腺を発達させ、体温調節機能が高まるということのようです。私が青年だった頃は、スポーツの最中に水を飲むのは、体が疲れるという理由でご法度でした。今だったら虐待や行き過ぎ指導と言われるでしょう。

 そんなことを思い返しながら、命と健康を守るということと、心身の理想的な育成ということについて考えるのです。最も大切なのは命を守り、健康を害さないよう配慮することでしょう。同時に、私たちは温度管理された無菌室にいるわけではなく、自然の中で生きていますから、様々な環境変化に対応する能力も求められます。ウィルスや細菌などについても、ある程度は体内に入っても(入っていても)、免疫力によって発症を抑えるなどして健康を維持できることが理想です。

 そうした心と身体は、しっかり遊んで、しっかり食べて、しっかり寝るなどの、自然な命の営みを当たり前のようにすることで培われるように思います。人工的なものは、それを助けるために用いるべきでしょう。後は、私たちに備えられた適応力に期待しましょう。  園長:新井純

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